パグのおばあさん

その6

「コウスケは、明日、何か困ったことが起きる。」
おばあさんが真剣な顔で言った。
「えー?何、何が起こんの?」
「それはわからへん。」
「なんやそれ。」
「とにかく気をつけること。」
「えー、いややなあ。」
「ショウちゃんも占ったげるで。」
「ショウちゃんちゃうって。占いもいらん。」
しばらくみんなだまった。
「あっ、おれ歯医者行かなあかんねん。」
とつぜん、コウスケはそう言うと走り出した。
ケイタも自分だけ取り残されるまいと
あわててコウスケのあとに続いた。
おばあさんはしばらく二人の後を目で追っていたが
またトランプを集めると、くりはじめた。

その日をきっかけにコウスケとケイタは
ときどきパグのおばあさんのところに
遊びに行くようになった。
おばあさんとパグのトランプにつきあったり
庭に置いてある古い自転車にまたがったり
丸太をころがしたりした。
おばあさんが居眠りをはじめても、
二人はかまわず、その楽しい小さな庭で遊んだ。
おばあさんは相変わらずケイタのことをショウちゃんと呼ぶ。
ケイタはいちいち「ちがうで」というのがめんどくさくて
ほおっておいた。
でもショウちゃんと呼ばれても返事はしなかった。

 


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