パグのおばあさん

その5

結局何回説明しても
おばあさんはケイタのことをショウちゃんと言った。
それでケイタもあきらめて、名前の話はしなくなった。
「なあ、パグもトランプしてんの?」コウスケが聞いた。
「そうや、わたしの占いを手伝ってくれてるんや。」
「えっ、占いしてんの?」
「あんたらも占ってあげよか。」二人はしばらく考えた。
「うん、占って。」コウスケが言った。
「おれはええわ。」
ケイタはこれ以上変なこと言われるがいやだったので
そう言った。
おばあさんはパグがくわえてる歯形のついたトランプを
とると他のトランプとまぜた。
まぜおわるとトランプを集めじぶんの前にならべはじめた。
横一列に8枚のトランプをならべ「さあ、ミホちゃん、
えらんで。」と言った。二人は思わず笑った。
「ミホちゃんていうんか、この犬。」ケイタが言った。
「そうや。かわいいやろ。」おばあさんは
二人がどうして笑ってるか気にしてないようだった。
ミホちゃんはトランプのところに鼻をよせて
においをかいでいるようなしぐさをした。
それからミホちゃんは一枚のカードをえらび、はしのちょっと
めくれたところをくわえて、もち上げた。
「かしこいねえ、ミホちゃんは。」おばあさんはそう言って
ミホちゃんの頭をなでた。
「えーっと、あんた名前何やった?」
「コウスケ」
「コウスケやな・・・」
おばあさんはしばらくカードを見ながら考えこんだ。
二人はだまって待っていた。

 


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