―地上で― 「ショウヘイ、ピアノは?」 「今からやる」 「はよせな、時間なくなるで」 「わかってるて、うるさいなあ」 「え?」 「なんでもない」 (ああ、もうやめたいな) ショウヘイはピアノの置いてある部屋へ行き、ピアノの前に座ると、 しばらくぼーっとしていたが、やがてあきらめピアノの練習をはじめた。 「杏ばあさん、これ、おれの友だち」 杏ばあさん、するどい目つきで二人を見る。 「あのな、こいつピアノがひきたいんやて、なんかええ方法ない?」 杏ばあさん、無言のまま。二人もしばらく黙る。 「誰かの体を借りろ」 杏ばあさんが口を開いた。 「え?」 杏ばあさんはポケットから銀色の手鏡のようなものを取り出した。 そしてそれを水平に持ち、覗き込んだ。 そのまま、何歩か歩いた。二人は後に続いた。 |