―天国で― 「ああ、ピアノひきたいなあ」 「おまえうまかったもんなあ、ピアノ弾けへんのはつらいやろ」 「天才ジャスピアニスト、早すぎる死、くやしいなあ」 「自分でゆうか? おれも、お前の車の助手席に乗ったこと、悔やむわ」 「もしかして、根に持ってる?」 「ちょっとな」 「まあ、ともに天国へ行けてよかったやん。はは。 ところで、ここにはピアノないんか?」 「見たことないなあ」 「うう、腕がうずくぜ」 「杏ばあさんに、相談してみるか?」 「誰や、それ?」 「生きてるとき、霊媒師とかやってた、怪しいばあさんや」 「怪しそうやな、そのばあさん。ピアノ弾かせてくれるんか?」 「わからんけど、連れてったるわ」 |