きもだめし

あおぞらコーポ。これがこのお話のぶたい。
ちょっとへんな名まえだから みんなすぐにおぼえてしまう。

カナ、エリ、ショウ、ミナ、サトルが あおぞらコーポの前で話している。

サトル「ぼくの部屋こない?星が見えるんだ。」
エリ 「星?」
カナ 「夜でしょ?」
サトル「昼間でも見えるんだ。」
みんな「えー?」
ミナ 「見たい、見たい。」
ショウ「行こう。」

みんなはサトルのうちへ向かう。
サトルの部屋の前で。

サトル「いいよって言ったら入ってきて。」

サトルは先に部屋に入る。
しばらくして

サトル「いいよ。」

みんなはサトルの部屋に入る。

みんな「わー。」
エリ 「きれい。」
カナ 「どうなってるの?」
ショウ「これ知ってる。いとこのとこにもあるよ。」
ミナ 「ねえ、ねえ、何?教えて。」
ショウ「星型のシールで電気をあてると電気を消してもしばらく光ってるんだ。」
サトル「カーテンだけだとすけるから、まどに黒い画用紙をはってるんだ。」

カナがカーテンをめくる。

カナ 「ほんと。」
ミナ 「サトルくんって宇宙が好きだもんね。」

しばらくするとだんだん光が弱くなってきて、暗くなる。

エリ 「ねえ、そろそろカーテンあけようよ。」
サトル「せっかくだからこわい話でもしようか。」
エリ 「キャー」
カナ 「おもしろそう。」
ミナ 「わたしこわい話しってるよ。」
カナ 「何?」

みんなミナの顔をじっと見る。

ミナ 「あのね、おばあちゃんに聞いた話なんだけど、おばあちゃんが子どもの時、すごく古い家に住んでたんだって。ある晩、おばあちゃんがトイレに行こうとしてろうかを歩いていたら白い物が目の前を通ったんだって。」
エリ 「こわい!」
カナ 「それ、ゆうれい?」
ミナ 「おばあちゃんはゆうれいって言ってなかったけど、こわかったって。」
サトル「ぼくもこわい話知ってるよ。」
カナ 「火星のゆうれい?」

みんな笑う。

サトル「かいき現象だよ。」
ショウ「かいき現象?」
サトル「満月の夜の12時ちょうど、そこにおいてある地球ぎがまわるんだ。」

みんな笑う。

カナ 「うそー、うそつきサトル。」
サトル「今のは冗談だよ。これからが本番さ。」
ミナ 「早く話して。」
サトル「ぼくのひいおじいちゃんが若いころの話さ。ある時、ひいおじいちゃんがしんせきの家にいくために、道を歩いていました。そこはまわりに家とかあまりないさびしい道でした。夕方から出かけたから途中で暗くなってしまいました。その時、とつぜん、うしろから風がふいてきたかと思うと、青い着物を着た人がすごいスピードでひいおじいちゃんをぬかして、ひいおじいちゃんの目の前ですっと消えてしまいました。」
みんな「キャー。」
エリ 「ねえ、こわいよー、部屋あかるくしようよ。」
サトル「今からきもだめししようか。」
ショウ「えっ、どこで?」
サトル「ばったり寺。」
エリ 「えー、やだー。」
カナ 「昼間だから大丈夫だよ。」
ミナ 「あそこ、何かにばったり会うからばったり寺っていうんだって。」
エリ 「何かって?」
サトル「ゆうれいだよ。」
エリ 「うそー。」
カナ 「もう、サトルくんエリちゃんいじめないでよ。」

サトル立ち上がる。

ショウ「行くの?」
ミナ 「ほんとに行くの?」
カナ 「なんだかおもしろそう。」
エリ 「えー、わたしいやだな。」
ショウ「エリちゃんるすばんしてる?」
エリ 「いやだ。みんなが行くなら、私も行く。」

みんなサトルの部屋をでて、玄関に向かう。

カナ、エリ、ショウ、ミナ、サトルがばったり寺まで
やってくる。

カナ 「ねえ、どうやってきもだめしするの?」
サトル「二人ずつでこの階段をずっとのぼって、お堂のところまで行ってお堂のうらまで行ったら、すごく大きな木があるからその木のうらへまわると、また細い階段があるんだ。そこをのぼるとまた小さなお堂があるから、そこでおまいりをして帰ってくるんだ。」
ミナ 「お堂のうらにそんな階段あった?」
サトル「この間見つけたんだ。」
カナ 「あんまりこわくなさそう。」
エリ 「じゃあ、私カナちゃんと行く。」
ミナ 「じゃあ、私ショウくん。」
カナ 「あれ、サトルひとりになるよ。」
サトル「いいよ、ぼくひとりで行きたいから。」

みんなで順番を決めるじゃんけんをする。

ミナ 「私とショウくんからね。」
カナ 「次が私とエリちゃん。サトルくんが最後。」
ミナ 「じゃあ、いってきまーす。」

ミナとショウが階段をのぼっていく。

ミナ 「なんか明るいし、きもだめしとは思えないね。」
ショウ「でもお堂のうらがわってちょっと不気味。」
ミナ 「そうね。私もあんまり行ったことない。」

ミナとショウ、お堂の前まで来る。
それからうらがわに行く。

ミナ 「あった。あの木よ。」
ショウ「ほんとだ。」

ミナとショウ、木のうらにまわる。

ミナ 「あっ、ほんとうに階段だ。」

ミナとショウ、階段にちかづいて、見あげる。

ミナ 「なんか、木がいっぱいあるし、うすぐらいね。」
ショウ「うん、ちょっとくらいね。」
ミナ 「行こう。」

ミナが先に階段をのぼりはじめる。
ショウがあとにつづく。

ミナ 「あった。小さなお堂あったよ。」
ショウ「ほんとだ。」
ミナ 「だれもいないね。」
ショウ「うん。ちょっとこわい。」
ミナ 「早くおまいりして、行こう。」

ミナとショウ、並んでおまいりする。

ミナ 「さあ、早く行こう。」

ミナとショウは小走りで小さなお堂をあとにする。
最初のお堂までもどってくる。

ミナ 「ここまでくれば一安心。」

ミナとショウ、みんなのところへもどっていく。

カナ 「ねえ、どうだった。」
ミナ 「ないしょ。 」
エリ 「こわかった?」
ミナ 「エリちゃんはきかない方がいいよ。」
エリ 「えー。」
サトル「何かいた?」
ミナ 「何かって?」
サトル「ううん、別に。」
カナ 「なんかかくしてるの?」
サトル「自分の目でたしかめてくれば?」
カナ 「わかった。エリちゃん行こ。」

カナとエリ、階段をのぼっていく。

カナ 「ぜったいこわくないよ。あかるいし。」
エリ 「だけどサトルくんが何かいるって・・・」
カナ 「わたしたちをおどろかそうと思ってあんなこと言ってるのよ。やなやつ。」

カナとエリ、お堂までやってくる。

エリ 「お堂のうらって、どんな感じ?」
カナ 「私も行ったことないよ。」

カナとエリ、お堂のうらに行く。

カナ 「あの木だ。」
エリ 「大きいね。」

カナとエリ、木のうらにまわる。

カナ 「あった。階段だ。」
エリ 「いやだー。気持ち悪い、木に囲まれてるし、不気味なかんじ。」
カナ 「エリちゃん、ここで待ってる?みんなにはだまっててあげるから。」
エリ 「いや、一人で待ってるなんて。私も行く。」
カナ 「じゃあ、行くよ。」

カナとエリ、階段をのぼりはじめる。

エリ 「だれもいないね。」
カナ 「みんな知らないんじゃない?」
エリ 「あった。小さなお堂。」
カナ 「ほんとだ。」
エリ 「ねえ、何かいない?」

カナとエリ、こわごわあたりを見る。

カナ 「多分、いないと思う。」
エリ 「早くおまいりしてしまおう。」
カナ 「うん、わかった。」

カナとエリ、小さなお堂にかけより、いっしゅん手を合わせ、すぐにくるっと向きをかえ、階段に向かって走り、かけおりていく。そして最初のお堂の前までくる。

エリ 「ああ、こわかった。」
カナ 「うん、思ってたよりあの階段と小さなお堂が不気味だったよ。」

カナとエリ、階段をおりはじめる。

カナ 「ねえ、サトルくんに何かいたよって言ってやろうか。」
エリ 「えっ、何がいたって言うの?」
カナ 「私にまかせといて。」

カナとエリ、みんなのところへもどる。

ミナ 「どうだった?
カナ 「こわかったよね、エリちゃん。」
エリ 「うん。」
カナ 「サトルくん、いたよ。不気味なものが。」
ショウ「えっ、何?」
カナ 「ないしょ。サトルくんが今から行くんだから。」
サトル「不気味なものって何だよ?」
カナ 「知ってるんでしょ?」
サトル「(それには答えず)じゃあ。」

サトル、階段をのぼっていく。

それから30分後

ミナ 「ねえ、サトルくんちょっとおそくない。」
カナ 「おそい。どっか勝手にいったんじゃない。」
ショウ「見に行こうか。」
カナ 「もう、しかたないな。」

カナ、エリ、ミナ、ショウは階段をのぼっていく。
お堂のところまでやってきて、うらへまわる。

カナ 「どこかにかくれてるんじゃない?」
エリ 「ねえ、サトルくん何かいるって言ってたよね?」
ミナ 「うん、言ってた。」
カナ 「あんなのうそだよ。」
ショウ「上のお堂に行こうか。」

4人は細い階段をあがり、上の小さなお堂に向かう。

エリ 「だれもいないね。」
カナ 「おーい、サトルー、でてこい!」
エリ 「きゃー!」
ミナ 「どうしたの?」
エリ 「お堂のうしろに何かいる。」
カナ 「サトルじゃない?」
エリ 「ちがう。なんかおじさんみたいな、変な顔だったよ。」

4人はこわごわお堂のうしろをのぞく。みょうな顔がちらっとのぞいて、かくれた。

4人はびっくりする。

エリ 「いやだ!こわい!」

エリが階段に向かい走り出す。

ミナ 「待ってよ。わたしもこわい!」

ミナも走り出す。

カナ 「ちょっと待って!」

カナとショウも走り出す。
4人は階段をかけおり、お堂をとおりすぎ
また、階段をかけおりる。
階段の下までおりてきて4人は走るのをやめる。

カナ 「もう、こけそうだったよ。」
ミナ 「サトルくん、もどってないね。」
エリ 「キャー、あそこに・・・」
ミナ 「何?」

エリが階段をあがりきったところにある
とうろうをゆびさした。

ミナ 「きゃっ、さっきの変なやつ。」
エリ 「ついてきてる。」

エリはそういうなり、走り出した。
ミナ、カナ、ショウも走り出した。

エリ 「家までついてきたらどうしよう。」
カナ 「いやだよ。気持ち悪い。」

4人はあおぞらコーポまで一度も止まらずに走った。
あおぞらコーポまでかえると、
自転車置き場のかげにしゃがんでかくれた。

ショウ「あいつ何だろう?」
ミナ 「ようかいだよ。」
エリ 「うそー。」
カナ 「そんなのいるわけないじゃん。」
ミナ 「(声をひそめて)ちょっと、あいつ来たよ。」

エリ、ミナにしがみつく。

カナ 「ちょっと、あいつ・・・」

カナが立ち上がる。

カナ 「おい、サトル、何考えてんのよ。」

ミナ、ショウも立ち上がる。
エリはミナのうしろからのぞく。

サトル「(変なかぶりものをかぶったまま)だってきもだめしだろ?だれかおどかすやくをした方がおもしろいだろ。」
カナ 「おどかしすぎだよ。エリちゃんなんかもう泣きそうだよ。」
ミナ 「気持ち悪いから、早くそれとって。」

サトル、かぶりものをぬぐ。

カナ 「ほんとに、そんなもの持ってるなんてやっぱりサトルって変なやつ。」
サトル「おまえらもかぶってみろよ。」
ミナ・エリ「いやー、気持ち悪い!」

ミナ、エリにげ出す。

それからおにごっこがはじまった。
いつものようにあおぞらコーポの前では
にぎやかな声がひびいていた。