火星からきた子?

あおぞらコーポ。これがこのお話のぶたい。
ちょっとへんな名まえだから みんなすぐにおぼえてしまう。

ひっこしてきた子

風がつよくふいている さむい日に だれかがひっこしてきた。
エリちゃんとカナちゃんとショウくんは
エリちゃんのうちであそんでいた。
ショウくんがまどからそとを見て 「おおきなトラックがとまってるよ」
と言った。
3人はまどから外を見た。
大きなトラックから テーブルやたんすがおろされている。
おとこの子がみえた。
みどりのリュックをせおっている。
「あの子、ひっこしてきた子ね。」
みんなは少しわくわくした。
しばらく見ていると ひっこしはすんだのに
その子はずっと外にいる。
おかあさんが 手をひっぱって 中へつれていこうとするけど
いやがっているみたい。
ついにおとうさんが 男の子をもちあげ あるきだした。
その子はばたばたあばれている。
「ひっこしがいやだったのかなあ」とみんなは話した。

火星からきた?

おとこの子があおぞらコーポにひっこしてきてから
なん日かたった。
ある日、カナちゃんがおおあわてでエリちゃんのうちにきた。
「ねえ、エリちゃんきいてよ!
あのひっこしてきた子、わたしがどこからきたの?
ってきいたら なんて言ったと思う?」
「どこだろう?」
「火星よ!火星!」
「へっ?」
エリちゃんもおどろいた。
それから 2人でショウくんをさそいに行った。
カナちゃんがまた同じことをショウくんに言った。
「えー!」
ショウくんもおどろいた。
そこへミナちゃんがやってきた。
カナちゃんがまた同じことを言った。
「うそー!」
ミナちゃんもおどろいた。
それでみんなは 2かいのおとこの子のうちに行って
たしかめることにした。
おとこの子は ひとりでるすばんしていた。
「ねえ、ほんとに火星からきたの?」
ミナちゃんが うたがいぶかそうにきいた。
おとこの子は下をむいていた。
こんどはカナちゃんがきいた。
「ねえ、火星って人は住めないんだよ。」
おとこの子は下をむいたまま。
「ねえ・・・」っとこんどはエリちゃんがなにかを言いかけた。
するとおとこの子はぱっとかおをあげ
「ほんとうだよ。火星からきたんだ。」
とはっきり言った。
みんなはあっけにとられてしまった。

火星からきた しょうこ

子どもたちは それぞれの家で
ひっこしてきた子が火星からきたと言っている という話をした。
どのおとうさん、おかあさんも笑った。
そして
「おもしろい子ね。」
「サトルくんていうの? ちきゅう人みたいな名まえね。」
「なかなかユニークだ。」
そんなかんじのことを言った。

ある日、みんなが外であそんでいると
サトルくんがとおりかかった。
ショウくんがちかくに行ってこう言った。
「ねえ、火星からきた しょうこ見せて。」
みんなはあそぶのをやめ、サトルくんを見た。
サトルくんはしばらくかんがえてから
「いいよ。」と言った。
それからみんなでサトルくんのうちへ行った。
そして はじめてサトルくんのうちの中まで入った。
みんなはきょうみしんしん。
おとうさんとおかあさんは しごとでるす。
たしかにちょっと へやの中はかわっている。
かわったいすやテーブルがあるし
かわった絵がかざってある。
サトルくんは おしいれから 小さなはこをもってきた。
りょう手で だいじそうにもっている。
みんなはそのはこをじっと見た。

はこのなかみ と かわった音楽

みんなが見まもる中
サトルくんは はこのふたをあけた。
「あっ!」
はこの中には かがやく石が入っていた。
「きれい!」
「きらきらしてる。」
「これなに?」
サトルくんは少しとくいそうに
「ダイヤモンドだよ。
火星には大きなダイヤモンドがたくさんあるんだ。」と言った。
「へえー。」
みんなサトルくんのことを 少し信じたい気分になってきた。

つぎの日も またみんなでサトルくんの家に行った。
かわった音楽がなっていた。
「この音楽 なに?」
カナちゃんがきいた。
「まえ住んでいたところで はやってたんだ。」
「へえー、火星で?」
みんなまたおどろいた。
でも、エリちゃんが言った。
「この音楽、このあいだ かぞくで インドりょうりのレストランに行ったとき きいた音楽ににてる。」

そのときショウくんがとつぜん
「これなに?」と大きなこえで言った。
みんなはびっくりしてふりむいた。

きみょうな いきもの

みんながふりむくと ショウくんは
へやのすみでなにかを見ていた。
カナちゃん、ミナちゃん、エリちゃんは
いっせいにショウくんのうしろにあつまった。
かごがある。
中になにかいる。
「ショウくんなにがいるの?」
カナちゃんがきく。
「わかんない。目がくりくりしてて、たぬきみたい。
でもたぬきよりずっと小さいし・・・」
「わたしも見せて。」
カナちゃんはかごにちかづいた。
エリちゃん、ミナちゃんもかごのちかくによった。
「かわいい!」
「これなに?サトルくん。」
「それは、モモミミモンガっていうんだ。」
「これもしかして 火星のいきもの?」
「そうだよ。むこうじゃ、こいつのなかまがいっぱいいるよ。」
「すごい!」
みんなめずらしいことばかりで わくわくした。

うそつき

それから3日後、
サトルくんもいっしょに みんな外であそんでいた。
5時すぎになってサトルくんのおかあさんが しごとからかえってきた。
カナちゃんがサトルくんのおかあさんのところに行ってこう言った。
「サトルくんのかぞくって火星からやってきたの?」
サトルくんのおかあさんは ちょっとおどろいた顔をして
それからわらった。
「サトルがそう言ったの?」
「うん。サトルくんのうちで火星のしょうこも見せてもらったよ。」
サトルくんのおかあさんは また わらった。
そしてえりちゃんが

ダイヤモンドと
かわったおんがくと
モモミミモンガのことをきくと

それはほんとうは
ガラスと
パキスタンのおんがくと
フクロモモンガだとおしえてくれた。

「へんな子でしょ。宇宙にきょうみがあるの。とくに火星にね。
でもうちのかぞくはちきゅうの人だから安心してね。
サトル、うそつきはあとでこらしめるからね。」
そう言ってサトルくんのおかあさんはかえって行った。
サトルくんは「ちぇっ」と言うとどこかへ行ってしまった。
のこされた子どもたちはちょっとがっかりした。
もっと火星のおもしろいものが見たかったから。
ほんとうにサトルくんのはなしを信じてたかって?
それはあまりそうではなかったかもしれないけど
とにかくたのしかったから。

ふたたびサトルくんのうちへ

あの日から何日かすぎた。
ある日、カナちゃんとショウくんとエリちゃんは
そとのブロックにすわって はなしをしていた。
「ねえ、サトルくんのうちに行こうか?」
エリちゃんは言った。
「わたしも またあそびに行きたいって思ってたの。」
カナちゃんが言った。
「じゃあ今から行こうよ。」
ショウくんが言った。
それで3人はサトルくんの家に行った。

「サトルくん、ひま?」カナちゃんが言った。
「うん。」サトルくんは小さなこえで言った。
サトルくんの家には やっぱり かわったものがたくさんある。
たいこみたいなもの、竹でできたものいれ、
ししゅうがたくさんしてあるカバン、サイのおきもの。
みんな「これなに?」と手にとったり ゆびさしたりしてきいた。
サトルくん、こんどは火星のたいことか おきものとか言わなかった。
そのとき、ミナちゃんがやってきた。
「ねえ、すごくかわった鳥がいるの、ちょっときて。」
みんなは外に出た。
ミナちゃんについてちかくのあき地まで行った。
「たしかこのへんに・・・」
「あっ、もしかして、あれ?」
ショウくんが近くの木をゆびさした。

こわい鳥?

きいろの小鳥が木の上にとまっている。
「あれ?カワベさんのとこのインコみたい。」
エリちゃんが言った。
「ヒューヒュー」
サトルくんが口ぶえをふきだした。
「ヒューヒューヒュヒュヒュ」まるでうたうように。
みんなはサトルくんときいろの小鳥をこうごに見た。
しばらくすると小鳥はとびたち、おりてきた。
「あっ!」みんなは声をだした。
「ヒューヒュ、ヒューヒュ」
小鳥は口ぶえのなる方にむかってきた。
そしてサトルくんがさしだしたゆびにとまった。
みんなはぽかんと口をあけて小鳥を見た。
「すごい!どうして?」
「まえ、かってたんだ。こんな鳥を。」
それからみんなでカワベさんのところに小鳥をとどけに行った。
やはりカワベさんの鳥だった。
だいぶさがしたらしく、とてもよろこんでいた。

かえりみち、カナちゃんが言った。
「ねえ、火星の鳥ってどんな鳥?」
サトルくんは にやっ とわらって言った。
「すごいぜ。おこると火をふくんだ。」
「こわーい!」
みんなわらった。