3つのねがいごと

ある時、マルにてがみがとどきました。
だれからだろう?
さしだし人の名前がありません。
とりあえずマルはてがみをあけてみました。
そこにはこんなことがかいてありました。

 「つぎにかかれていることばを
  こころの中でとなえてから
  おまえのねがいごとを言えば
  そのねがいごとがかなう。
  そのことばは○○○○○○○だ。
  チャンスは3かい。」

ほんとかなあ?
マルはしんじられません。
だけどねがいごとがかなうなんて
ラッキーだなあともおもいます。
マルはしばらくかんがえて
そしてこう思いました。

ほんとかどうかためしてみよう。

マルはこころの中で
「○○○○○○○」ととなえ、
「えーっと・・・そうだ!
 いちど、空をとんでみたかったんだ。
 とりになれますように!」

するとどうでしょう。
マルの口がとがったかとおもうと
くちばしになりました。
手はつばさにかわります。
そして・・・ほんとうにとりになりました。

「しんじられない!」
マルはさっそくはねをうごかしてみます。
ぱたぱたぱたぱた。
マルのからだはふわっとうきあがりました。

ああ、なんてすてきなんだろう。
マルは上へ上へあがっていきます。
かぜをきってすきなようにとびまわります。
空をとぶってきもちいいなあ。
とりってしあわせだなあ。
たいように少しちかづいた気がするぞ。
あっ、あそこにとんでるのは・・・
ひこうきだ!
マルは空にはいいことばかりあると
おもいました。
が・・・

しばらくすると、つよいかぜがふいてきて
空のようすがかわってきました。
そしてぶあついくもが
たいようをかくしてしまいました。
くもはどんどん空をおおっていきます。
マルはふあんな気もちになりました。

そのとき、
とつぜんぴかっと光ったかとおもうと
ばきっと音がしました。
マルはしんぞうがとまるかとおもいました。
目のまえをいなずまがはしったのです。
たいへん!

マルはあわててかくれようとしましたが
どこにもかくれるところがありません。
おろおろとびまわっていると、また
ぴかっ・・・ばきばきっ!
ああ、もうだめ!
マルは泣きながら、
ふとあのことばをおもいだしました。

いそいでこころの中で「○○○○○○○」
ととなえると、なにもかんがえず
「さかなになれますように!」
と言いました。

するとマルのくちばしはさかなの口になり、
つばさがなくなり、
からだがつるっとしてきました。
そしてさかなになったマルは
下に向かっておちていきました。
マルはあまりにあわてていて
下になにがあるか、
かんがえていませんでした。
でもうんのいいことに
下は海でした。
ざぶーん。
マルはなんとかカミナリからにげることが
できました。

ああ、なんてらくちんにおよげるんだろう!
ちょうどさかなにもなってみたかったんだ。
マルは海の中のさかなたちにまじって
およぎます。
しばらくするとカミナリもやみ
またたいようがでてきました。
海の中はそうぞうしていたいじょうに
すてきです。
マルは気分よくどんどんとおくまで
およいでいきます。
さかなっていいかんじ。

そのとき、マルはなんとなくうしろを
ふりむきました。
するとマルより3ばいくらい大きなさかなが
口をあけてちかづいてきているのが
見えました。

「きゃー!」
マルはもうスピードでにげます。
たべられたらおわりです。
そんなことおねがいしていません。
もう、しにものぐるいでおよぎます。
でも大きなさかなもすごいいきおいで
うしろからせまってきます。
ぱくっ
大きなさかなの口がマルのおびれに
さわりました。

「もうだめ!」
マルはとつぜんUターンをしました。
大きなさかなはきゅうにまがれず
まっすぐおよいでいきます。
チャンス! いまのうちに・・・
「○○○○○○○」
マルは少しかんがえ
「きりんになれますように!」
と言いました。

マルはいつのまにかうとうとと
ひるねをしていました。
「あれ?ここはどこ?」
マルはそうげんにねそべっていました。
からだにはもようがあります。
「わあ、ぼくきりんだ!」
そう言うとマルはたちあがりました。

なんてせがたかいんだ。
うんととおくまで見える。
マルはじぶんのながい足に見とれました。
くびもながいはずですがよく見えません。
あっ、ぞうがいる。
しまうまも。
うわっ、むこうのはライオンかな?
マルはいろんなどうぶつを見て
こうふんします。

ああ、きりんっていいなあ。

しばらく歩いていると
ぐー
マルのおなかがなりました。
きょうはずいぶんうごきまわったので
おなかがぺこぺこです。
ところで何をたべればいいのでしょう?
ここはそうげんですし、
どこにたべるものがあるのでしょう?
マルはすこしはなれたところに
きりんがいるのを見つけました。
さっそく行ってたずねてみようとおもいました。

マルがきりんにちかづくと
そのきりんはじっとこちらを見つめます。
「見なれないかおだね。」
そのきりんが言いました。
「うん。はじめまして。よろしく。
それよりちょっとおしえてほしいんだけど
なにかたべるものある?」
「たべるもの?いっぱいあるじゃない。
ほらここにも、あそこにも。」

きりんがくびをふっておしえてくれたのは
どうも木のはっぱのようです。
「えっ、これをたべるの?」
「なに言ってるの?
あんた、きりんでしょ。」

マルはしかたないのでちかくの木のはっぱに
ぱくっとかぶりつきました。
「ぺっぺっ、うえー、おいしくない!」
「ふん。何言ってんの?」
きりんはそっぽを向いて行ってしまいました。
そんなあ。
マルはとほうにくれました。
きゅるるる ぐー
おなかはなりっぱなしです。
もういちどはっぱをぱくっ。
「ぺっ、ぺっ」

マルはかなしくなってきました。
そのとき、あのことばをおもいだしました。
しまった。もう3かいおねがいをしてしまった。
マルはいちかばちかもういちど
「○○○○○○○」とこころの中でとなえ
「ねずみにもどって、いえにかえれますように・・・」
と言ってみました。
でもやはりなにもおこりません。
「どうしよう。」
マルはそのばにすわりこみ泣きだしました。

しくしくしくしく。
おなかがすいたよー。
マルはじぶんのなきごえで目がさめました。
じぶんの手がみえました。
ぱちぱちまばたきしてから
もういちどよく見ました。
そしてくびをさわりました。
たすかった!夢だったんだ!
マルはじぶんがねずみでよかったと
しみじみおもいました。

さあ、気をとりなおして
いつもとおなじ一日のはじまりです。

「○○○○○○○がどんなことばだったって?
そんなことばは知らない方がいいよ。
きみのためにね。」
マルが言いました。