ピアノをひこう



ぼくは別にピアノがきらいじゃない。
練習もいやじゃない。
だけど、
「ピアノの先生やピアニストになるにはもっと練習しないとね」
とこんなふうに言われるのがいやいなんだ。
実はぼくはピアノの先生にはなりたくない。
たいてい生徒はあまりやる気がないし、
そんな子たちを教えるのは大変だ。
ピアニストになるなんてそんな大それたことも考えていない。
だからそんなふうにプレッシャーをかけられるといやになってしまう。
1人で家にいるときはこっそりレッスンと関係ない曲をひいたりする。
練習曲もわるくないけど、自分で好きな曲をえらんでひくのは
なにより楽しい。

ある日両親は外出してぼく1人だったから、本だなにかくしてある
がくふを取り出してきてピアノをひき始めたんだ。
ここのところ練習曲があまりうまくひけなくておもしろくなかった
から、よけいに好きな曲をひくのが楽しく感じられた。
ぼくは小一時間ほど気分よくピアノをひいていた。

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