キクちゃんが引っ越す日がきた。
朝早くわたそうと、タカトが家を出ると、キクちゃんも外にいた。
「キクちゃん、これ記念に作ってん」
タカトはキクちゃんに額に入った切り絵をわたした。
「ありがとう……これ何? 羊?」
「えっ? 犬やねんけど」
「えっ? ああ、ほんまや、犬やわ。ありがとう。
これ、新しい家に飾るわ」
新しい家。
この言葉を聞いたとき、タカトはようやくキクちゃんがほんとに行ってしまうんだと思った。
「また、京都に帰ってくるわ」
「うん」




もどる つぎへ