次の日、タカトは学校から帰るとさっそく切り絵にとりかかった。
もう、緑の画用紙ないし……赤にしょ。
タカトは昨日よりもっとていねいに、赤い画用紙を切り始めた。
昨日よりましやな。
でも、なんか犬に見えへんな。
タカトはもう一度、赤い画用紙を切り、それも気に入らなくて、
ピンクの画用紙を切り始めた。
なんでへたなんかな?
ピンクの切り絵をほりなげて、タカトははさみを置いた。

あと三日で、キクちゃんは引っ越してしまうという日、学校へ行きながら話をした。
「引越しって大変やわ」
「なんで?」
「もう家の中めちゃくちゃやもん、ダンボールだらけやし」
「へえー」
「私のだけで、10個以上あるし」
「そんなあんの?」
そんな話をしてても、タカトはキクちゃんが行ってしまうということがあまり想像できない。

きり絵はまだできてない。
「うすく、鉛筆で下書きしたら?」
タカトは、おかあさんに言われ、そうしたらうまくいきそうな気がした。犬の写真を見ながら、タカトは何枚か犬の絵をかいた。
これでええかな?
水色の画用紙にかいた絵をながめながら、まよった。
よし、決めた! あとは切るだけや。
今度は、まあまあうまくいった。

これでええかな?
そや、額に入れたほうがええわ。
タカトはおとうさんに、機関車の切り絵を別のところに入れていいか聞いた。おとうさんは、ええよ、と言ってくれた。
「上手にできたやん」
おとうさんも、おかあさんもほめてくれた。
あとは、引越しの日、渡すだけや。


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